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【女性の健康を守る】LEP(低用量ピル:低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤)とは?

月経痛やPMS(生理前症候群)で悩んでいませんか?
最近では、「LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤)」という治療薬が、女性の生活の質(QOL)を大きく改善すると注目されています。

今回は、この「LEP」について、わかりやすく解説します。

 

◆ LEPってなに?

LEPとは、「Low dose Estrogen Progestin(低用量エストロゲン・プロゲスチン)」の略称で、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲスチンを少量ずつ含んだ薬のことです。

同じような薬に「経口避妊薬(OC)」がありますが、LEPは主に医療目的(保険適用)で使用される治療薬を指します。

LEPもOCも、主役はプロゲスチン製剤です。プロゲスチンで排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑制し、子宮頚管粘液の粘度を上げ精子の運動能を抑えることで、避妊効果、月経困難症治療、子宮内膜症の進展を予防する効果を発揮します。プロゲスチンのみでは不正出血が多くなるので、それを予防するために少量のエストロゲン(エチニルエストラジオールEE)を加え、EE:50㎍/日より少ないものがLEPです。また、LEPの副作用である血栓症のリスクをさらに減少させるために、EE:30㎍/日より少ないものを超低用量ピルULEPと言いますが、ひとまとめとしてLEPということが多いです。

ちなみに当院で取り扱いピルは、LEP:EE35㎍/日:フリウェル配合錠LDのみ。ULEP:EE20㎍/日:フリウェル配合錠ULDジェミーナヤーズフレックスドロエチです。

月経困難症・子宮内膜症の治療には、LEP, ULEPが用いられます。最近はULEPのラインナップが増え、患者様の安全性とQOLにより配慮され、選択肢も増えました。また、血栓症のリスクをさらに低減させ、EEの代わりに胎児の肝臓由来の天然型のエストロゲンE4を使用したLEP:アリッサが2024年12月に発売され、より安全に月経困難症・子宮内膜症の治療が可能になりました。

 余談になりますが、LEP以外の月経困難症・子宮内膜症の治療薬(保険薬)として、ジェノゲストなどのプロゲスチン製剤、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)放出リング:ミレーナ、GnRHアンタゴニスト:レルミナなど症状やQOLに合わせて選択することが可能です。また、ミレーナは避妊目的で利用する場合は経口避妊薬同様自費診療となります。

どんな症状に使うの?

LEPは以下のような月経に関係するさまざまな不調の治療に使われています。

  • 月経困難症(つらい生理痛)
  • 子宮内膜症
  • 月経過多
  • 月経不順
  • 月経全緊張症PMS(生理前のイライラや気分の落ち込み)

 

◆ LEPの主なメリット

  1. 生理痛の軽減
     排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑えることで、消退出血量が減少し、痛みの物質・プロスタグ  ランジンの放出量が減り生理痛が軽減されます。
  2. 生理の周期が整う
     規則的なサイクルになるため、予定が立てやすくなります。
  3. 月経量が減る
     貧血の改善にもつながります。
  4. 子宮内膜症や将来の病気の予防
     子宮内膜の増殖を抑えることで、長期的な健康リスクの軽減が期待できます。
  5. PMSの改善
  6. 副効用としてニキビ・肌荒れの改善(LEPの種類による)
  7. 副効用として避妊効果

 

LEPの中には海外では経口避妊薬として販売されているものもあります。月経困難症・子宮内膜症の治療のために健康保険で処方されるLEPも正しく服用すれば、理論的には避妊可能です。経口避妊薬(OC)もLEPも内服忘れ、下痢や嘔吐による薬剤の吸収障害があれば十分な避妊効果は期待できません。

 同様に、経口避妊薬もLEP同様の月経困難症やPMSの改善効果があります。

 LEPは月経困難症・子宮内膜症の治療目的であるために保険診療で処方が可能です。

 経口避妊薬は避妊目的であるための自費診療となります。

副作用はあるの?

どんな薬にも副作用はあります。LEPでよくある副作用には以下のようなものがあります。経口避妊薬も同じ副作用が見られます。

  • 吐き気・頭痛・胸の張り(服用初期によく見られる)・不正性器出血
  • 血栓症(ごくまれですが注意が必要)

血栓症は、長時間の座りっぱなしの人や喫煙習慣がある人ではリスクが高まるため、事前に医師としっかり相談しましょう。妊娠中や産後の人に比べるとそのリスクは1/8以下で、多いわけではありません。しかし、血栓症を起こさないように細心の注意を払って処方しています。

問診や検査結果によりLEPが使用できない場合があります。年齢40歳以上で初めてLEP希望の人・BMI35以上の人・高血圧・糖尿病・前触れのある頭痛のある人・血栓症を起こしたことがある人・その他持病のある人は医師と十分に話し合い、他の薬剤などを選択することは可能か検討しましょう。使用中副作用が生じる場合にはLEPを中止し他の薬剤などに変更する場合もあります。近年ではより血栓症リスクの少ないアリッサや、血栓症のリスクを増やすエストロゲンの含有されていないジェノゲスト(プロゲスチン製剤)、(ミレーナ)薬剤放出リング等、選択肢が増えていますのでご安心ください。

安全にLEPを使用するにあたり定期的な受診や検査(血液検査・エコー検査・子宮がん検査等)が必要です。服用前に血栓症を疑う症状をお伝えし、血栓症を疑うような症状・対処行動・血栓症を起こさないための予防等の患者教育にも力を入れ、再診時には血圧・体重をチェックし、血栓症の症状がないか具体的に問診し、予防行動につながるように努めています。ご協力よろしくお願いいたします。

 

保険は使える?

はい、LEPは医療目的で処方されるため、保険適用となります。
そのため、費用の負担も比較的軽く、継続しやすい治療です。

当院では以下のLEPを揃えています。患者様の症状、つらさを把握し、薬剤選択に努めています。内服後は症状の改善や副作用をチェックし、QOLの向上を目指します。

  薬剤名 (EE(エチニルエストラジオール)+プロゲスチン) 

  ・フリウェルLD  :EE 35㎍/日 + ノルエチステロン

  ・フリウェルU LD :EE 20㎍/日 + ノルエチステロン  

  ・ジェミーナ    :EE 20㎍/日 + レボノルゲストレル  

  ・ドロエチ     :EE 20㎍/日 + ドロスピレノン

  ・ヤーズフレックス:EE 20㎍/日 + ドロスピレノン

  ・アリッサ     :エステトロール + ドロスピレノン

 ◆ こんな人におすすめ

  • 毎月の生理が本当に辛い…
  • PMSで気分の波が大きい
  • 子宮内膜症の診断を受けた
  • ついでに肌荒れやニキビの改善も期待したい
  • ついでに避妊効果もあれば嬉しい

LEPは、「生理があること自体がつらい」と感じている人の味方です。
「我慢するのが当たり前」と思わずに、ぜひ婦人科に相談してみてください。

最後に

LEPは、ただの「生理を軽くする薬」ではなく、女性のQOLを向上してくれる医薬品です。痛みや不調を我慢するのではなく、「治療できるもの」として捉えることが大切です。安全に快適に使用できますように、私たち産婦人科医が伴走いたします。

清田産婦人科医院 院長 清田宗利 産婦人科専門医 漢方専門医