私は縁あって平成1年4月から麻生飯塚病院で産婦人科医師として勤務する一方で、漢方診療科立ち上げチームの一員として広く研鑽を積む機会に恵まれました。その頃、日本東洋医学会の漢方専門医を取得し、熊本に帰ってから、平成6年に産婦人科医院を開業、産婦人科医療に専念する傍ら、熊本産婦人科漢方懇話会を定期的に開催し、産婦人科医師仲間と共に漢方診療について楽しく勉強を続けています。
当院には、80種以上のエキス漢方を揃えています自慢するようですが、開業医としては品ぞろえが多いほうです。煎じ薬ではありませんが、顆粒状のエキス漢方でほぼ保険適応にて処方しています。院内処方を主にしていますので、お財布にもやさしいと思っています。
漢方薬は、植物、鉱物、動物などを原料にした(もちろん植物が多いです)生薬を組み合わせた構成薬です。西洋薬はこの病気にはこの薬が効くというようなイメージに対し、様々な体のバランスを考慮し、バランスを整え患者様本来の自然治癒力や免疫力を高め、病気や症状を改善することを目標とします。
例えば、冷え性の人には身体を温める性質の薬を、暑がりの人には、身体を冷やすような処方をします。体が弱っている人には、気(エネルギー)、血、水、いずれかを補うような処方をします。体の中に病原体など入ってきた時は、体力の有無も考慮して免疫作用を活性化させる為の処方を行ったりします。
最近では漢方薬の成分、薬効などにも科学的なアプローチが試みられ、一部の分野では西洋薬並みに病名漢方的な使い方をされる分野もあります。そういう恩恵も良いこととして、今までの経験を生かして様々な主訴の患者様と向き合い、健康感が向上するようなお手伝いを続けてまいります。
通常の西洋医学の診療とともに、東洋医学である漢方薬を組み合わせることで。体のバランスを整え、治療と体質改善を同時に進めるのが漢方治療です。
漢方薬にはこむら返りに対する芍薬甘草湯、咽頭絞扼感に対して半夏厚朴湯などはとても即効性があります。風邪、インフルエンザ、胃腸炎などの急性症状は2~3日で改善することが多く、後は休養と残存する症状に対処します。
更年期障害や、月経にまつわる治療、不妊症、フクロウ症候群、心身の症状、体質改善の為の処方は、1か月から3か月程度の内服で改善の傾向がみられます。
内服した処方の効果が出るまでの時間がかかる理由は、最初は生薬の生理活性物質が腸から吸収されにくく腸内細菌が代謝する事で吸収されやすくなることで効果が表れやすくなると言われています。元々、代謝できる腸内細菌を持つ人は早く効果が表れたりしますし、持ってない人は、代謝する腸内細菌が増えるのに時間がかかるわけです。
慢性的な症状に対して漢方薬の効果が表れ症状が改善してくると徐々に減薬ができます。
しっかり対話をしながら、患者様の病状の改善とQOL改善を目指していきます。
なお、漢方薬の副作用も適宜チェックします。不快な症状がある場合はお早めにご相談ください。