清田産婦人科医院

web予約はこちら

清田産婦人科医院

Facebook line
WEB予約はこちら

ブログ

私の漢方修行 はじめの一歩から

 35年ほど前、私が最初に処方した漢方薬は当帰芍薬散でした。産婦人科医であればよくあることかもしれません。当時、熊本赤十字病院に勤務し長嶺に住んでおり、近所の奥様が高校生のお嬢さん同伴で来院され、お嬢様が生理痛が辛いとの訴えでした。当帰芍薬散を処方し、生理痛は軽減したもののニキビが悪化したことで、学びが浅い当時の私はそれでお手上げというお粗末な話となりました。

 当時熊本赤十字病院の薬剤部では、五苓散の座薬を作成していて、下痢や嘔吐の激しい胃腸炎症状の子供に投与すると、改善率が高いことを知りました。嘔吐下痢症に五苓散座薬を提案したのが、内科医の吉冨誠先生でした。漢方に詳しいお父様の影響を受けた吉冨先生は実に知識が深く、基本書や魅力ある本の紹介をしてくれました。故牟田光一郎先生との難解な勉強会へも誘われて御船にある診療所にも通い万病回春や傷寒論の勉強をさせていただきました。中医学を実践する久光正太郎先生を紹介され、先生のクリニックに通い、おびただしい種類の生薬を初めて目の当たりにしました。中国の北京協和医科大学で中西結合医学を学ばれ、症状に応じて自ら何種類もの生薬を組み合わせて処方構築しされるのです。私が難しすぎて困った顔をしていると「漢薬の臨床応用」を薦められ、生薬の一味一味を理解するようにアドバイスを受けました。

 昭和63年飯塚病院の産婦人科に大学の人事で派遣され、縁あって漢方診療科を立ち上げるプロジェクトチームの一員となり、兵庫県立尼崎病院東洋医学科、日産玉川病院東洋医学科、北里大学東洋医学研究所、中国の上海中医学院(婦産科・鍼灸経絡研究所・気功研究所)を視察する機会を得ました。私は2年後には熊本に帰ることになりましたが、平成4年には富山薬科大学の漢方診療科の水間先生が来られ飯塚病院に入院施設のある漢方診療科が立ち上がり、今や飯塚病院は九州では漢方のメッカになりました。その時のプロジェクトチームでいろんな情報収集をし上層部と掛け合いながら飯塚病院の漢方診療科の未来を託す人材を探す過程に関われたこと、プロジェクトチームの皆が素晴らしい仲間であったことが懐かしく思い出されます。

 また、飯塚では台湾出身の元山福仁先生が診療所を開業しており、漢方と鍼灸を併用した診療を見せていただき、元山先生は産婦人科医でありますが喘息発作を起こした患者を目の前で鍼灸ですぐに発作を収める等驚くことばかりでした。暇な時は元山先生の診療所に通って鍼灸と台湾式中医学の勉強をさせてもらいました。

 師と仰ぐ先生方から沢山の課題を頂き自分のペースで学ぶ一方で、ツムラの後援を受け私が世話人となり、熊本の産婦人科医の仲間で漢方懇話会を作り、漢方を得意とする先生方を招いて学び続けてきました。講演会は116回となり長く続けてきたなと実感したところです。勉強会の後は懇親会をして親交を深めてきて来ましたが、ここ3年ZOOM形式で人と人の距離が遠く、会員の先生方から早く元の形式に戻してほしいとの声も聞こえてきます。産婦人科領域では、月経周期の乱れ、月経困難症、PMS、妊娠中、授乳中でも比較的安心して飲める、不定愁訴が多い更年期症状、検査値に異常が無くてもその症状に効く等々、漢方薬を使いこなすことで治療の幅が広がります。産婦人科医であれば子宮と卵巣などの臓器を診る事になりますが、漢方を処方しようとすれば全体として診る、五感で診ることも大切で、患者さんとのコミュニケーションにも役立つことがメリットだと思います。これからも仲間と共に学び続けて皆様のお役に立ちますよう努力します。