令和7年12月2日(火曜日)
清田産婦人科医院 院長 清田宗利
膣におけるにおけるエストロゲンと乳酸桿菌の働きについてお話します。
女性の卵巣から分泌されるエストロゲンには膣粘膜の膣上皮細胞に含まれているグリコーゲンを増やす働きが有ります。膣内にいるデーデルライン桿菌(乳酸桿菌)はグリコーゲンを分解して乳酸を生成します。この乳酸によって膣内は酸性に保たれ(pH3.8~4.5)有害な細菌の増殖が抑制されます。健康な膣内フローラ(細菌叢)を形成し膣の自浄作用を高めます。結果的にエストロゲンが大きな役割を果たしています。
妊娠中はエストロゲンが大量に産生されるため、膣の自浄作用は非妊時に比べ高くなります。早産の原因になり得る細菌を結果的に予防していると言うことができます。反対に、閉経後はエストロゲンが低下するため、膣上皮のグリコーゲンが減り、善玉菌も減少することで乳酸の産生が低下します。そのために膣内の自浄作用も減少します。閉経後は膣内の自浄作用が弱まるため雑菌が膣内に増殖し、細菌性膣症を引き起こしやすくなります。その場合少量のエストロゲンを足してあげる事で改善することがあります。
膣内を頻繁に洗う習慣がある人もいますが、大切な乳酸桿菌を育てる意味でも洗いすぎにはご注意ください。